思春期に大好きだった椎名誠さんの本を久しぶりに読み返す。実にくだらないし、何の教養の足しにもならないけれども、あーこの人のエッセイは本当に斬新でうまかったんだなと思う。また昭和という時代の匂いを思い出して、心から和んでしまう。この本が出版された1985年には、まだ新幹線の中に食堂車があったのだ。洋食はまだ一般的ではなく、お皿に出されたライスはフォークの背中に乗せて食べていた。また世の中では普通に冷やご飯にお味噌汁をぶっかけて食べていたということを思い出す。「哀愁」という言葉がぼくの中での椎名誠作品のキーワードで、小説でもエッセイでもそういう箇所がとても好きだった。縁側の陽射しがあたる匂いとか土曜日の台所の匂いとか、クルマの排気ガスとか鄙びた田舎の景色とか、ぼくはそういうものが好きなんだと思い出した。
本のことを語る
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