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ラジオ/CDラジオのことを語る

東芝 Aurex TY-ANX2:ラジカセを超えた強火のラジオ+マルチスピーカー

東芝 Aurex TY-ANX2

ラジオの音質は、受信設備の性能によって大きく変わります。電波をアンテナで受け、変調された信号を復調し、音声信号を増幅、スピーカーの振動板が音波を発生させる、といった各段階の全てが最終的な音質を決めます。ラジオとは電波と音響という、はてしなく奥の深いもの二つが一つになった、とんでもないものだということです。

FM をステレオ音声で楽しみたければ、屋根に大きい八木アンテナを揚げ、往年の高級チューナーから、ちょっとした電話台くらいのスピーカーにでも出せれば最高なのだけれども、そこまではなかなかできないので、ミニコンポやCDラジオなどの出番となります。

ラジカセ系のステレオ機も、昔のように10万円を超えるような高級品は出なくなったとはいえ、数千円から数万円まで幅があって選択に困ります。感度や音質などは実際に使ってみないと分からず、ある程度慣れていないと参考になるような評価は書けないので、Amazon の素人レビューを見ても頭が痛くなることしばしばです。

ラジオの評価ならラジオライフ誌はわりと参考になるものですが、CDラジオ/ラジカセ系の機器が扱われることはあまりありません。しかし、同誌は2020年の「AM/FMラジオ・ベストバイ」に東芝のCDラジオ TY-ANX1 を選出しました。ソニーの ICF-M780N やパナソニックの RF-300BT を押さえての快挙です。

高感度と重低音で FM ステレオ放送やデジタル音源も快適に楽しめる

TY-ANX1 に若干の機能を追加して21年に発売された後継機が TY-ANX2 です。FM ステレオ/中波 AM 放送受信、CD の再生、SDカードまたはUSBメモリーを使った MP3 形式での録音と MP3/WMA ファイルの再生、Bluetooth での音声の送信と受信、有線での音声入力などが主な機能です。

操作系は上面にまとめられている。
リモコンは”名刺サイズ”に近い小型軽量ながら聞くために必要な機能は不足なくまとめられている。

性能面で主要な特色は、50mmx2 のステレオスピーカーにあります。これは駆動部に一般的なフェライト磁石の十倍以上の力を持つとされるネオジム磁石が用いられたもので、それに合わせて振動板などの構造も見直したと東芝は売り込んでいます。

そうはいっても、直径 50mm 程度の大きさでそんなに良い音が出るのか? と疑ってしまう所。しかしこれは実際に聴いてみれば火を見るより明らかでした。力強さは圧倒的で、精細さもあり、音域の広さも音楽的品質です。低域は男性の低い声が魅力的に感じられる響きで、高域も十分。どんな信号が入ってもきちんと音にしてくれる安定感もあります。奥行き感には欠けるものの、むしろ押し出してくる感じが強いため、音場感は強くなっています。音量を大きめにしても無理に張り上げた感じにならない堅牢さもり、部屋全体に音を満たすことができます。

CD の音声スペクトログラム。
FM の音質。低音の強さが見て取れる。
AM ではフィルタが広いため高音が放送波の限界まで出ているが、夜間には混信によるビート音が発生しやすく、9kHz の高さに線となって表れている。

ラジオとしてはラジオライフ誌が評価するように感度良好で、特に FM はロッドアンテナが約 40cm と、FM 放送帯に対してはかなり短いにもかかわらず、アンテナを伸ばし切った TECSUN PL-880 より若干劣る程度という印象です。音質面ではステレオ分離ノイズがきわめて少なく、マルチパス障害にも強い印象で、FM 放送の実力が感じられます。

AM の感度もパナソニックの RF-562DD2 や RF-U150A のような高感度機と比べれば劣るものの、並の携帯ラジオではやや厳しい強さの電波をしっかりつかむほどの実力はあり、中の上から上の下くらいという印象です。音質はフィルタがかなり広めで高域が出ており、語学番組の発音も明瞭に聴き取れます。奥行きのない縦型であるため、入感の良い場所を探して置き場所を変えやすいのも利点です。

FM と AM のどちらでも、スピーカーの解像度が高いため、街頭からの中継やスポーツ中継などを聞くと、色々な音の個別性が聴き取れ、立体的な音場が感じられます。

PC のスピーカー出力から本機の音声入力端子につなぎ、オンライン RPG「PSO2:NGS」をプレイしてみた所、音の解像度が高いため、自分の足音や環境音、エネミーの出す音など、それぞれが所属の違う音であることが明確に感じられ、音場の中に入り込んだような感覚を楽しめました。PC でゲームや映画、音楽鑑賞などをするなら、スピーカーとしての検討に入れても良いでしょう。

radiko その他のデジタル/インターネット音源も、スマートフォンなどから Bluetooth か有線接続で、手軽により快適に聴くことができます。

スマートフォンからの音声入力は Bt も便利だが、節電や音質の面では有線の方がおすすめだ。

カセットテープに代わる SD/USB メモリへの録音は、本体のボタン一押しですぐに開始できるだけでなく、10件まで設定できる予約録音は、曜日を指定した繰り返しも指定でき、ラジオサーバー的な使い方も可能です。録音時のデジタル処理によって、ラジオの音声に雑音が入るようなこともないようです。

USB か SD メモリーに録音できる。SD カードは差し込んだ状態で蓋が閉まるとなお良いのだが……

このように TY-ANX2 はかつての大型ラジカセを彷彿させるような力強さと広がりの良さを持つコーンを備え、ラジオとしても高性能でありつつ、現代的なデジタル音源の出口としての役割をも担う、ラジカセを超えたマルチスピーカーです。

欠点としては、音が非常に力強いため、内容や状況によってはむしろ音が出すぎると感じる場合もあることでしょう。そんな時のための「音質モード」は FLAT、ROCK、JAZZ、CLASSIC の4段階で、JAZZ か CLASSIC にすると低音は抑えられるものの、高音も抑制して中音寄りにする設定も欲しくなります。これに関しては下位機種の新製品で POP が追加されているので、TY-ANX 系の後継機にも期待できそうです。

背面。指をひっかけて持ち上げられるように申し訳程度のへこみはあるが、できればハンドルも欲しい所。
液晶表示の情報量は十分だが、文字の太さや大きさが均一でメリハリがなく、字間が広すぎて読みやすさはもう一つ。"NORTHWAVE"が収まらずスクロールされる。

もう一台欲しくなった……。