/一行超短編

定型文に笑顔を添えて紙袋を差し出す彼女の腕に薄い無数の傷跡を認めた瞬間、店員さんの皮がべろりと剥げ、私の前に一人の女が現れる。

運が悪い一日のしめくくりに冷水のシャワーを頭から思い切り浴びてしまった時、不意に大声をあげて泣きたくなったけれど、涙は一滴も出ずに、髪から滴る雫だけがしかめ面を流れていった。

就職に有利にはならないけどあの人の恋人よりちょっとでも上の資格を取りたくてチャレンジしました。

薄暗い地下の隠れ場所、次々と客が去りいよいよ寂しげに隔絶された空間で、三本目の煙草に火をつける女の後ろ頭を見ていた。

あの日出した一瞬の勇気が、今も私に初恋の人の笑顔と、春の空気と、十五の頃の鼓動を蘇らせる。

誤解されるのは耐えられないので、私をどうか、何かに当て嵌めようとしないでただ「理解できない」と言って。

失ったものを探し続けて、やがて何を失ったのか忘れて、とうとう忘れたことすら忘れて、私はようやく幸せになった。

寄り添って3時間。わたしがすっかり依存してしまう前に「やめて」と、あなたに言えなくて、来週、後悔することにした。

メシヤに救われることは信じられないがめしやには何度も救われていて、白い米より信じられるものを希いつつ今日も米を噛む。
（すいません、二行になっちゃったんで再投稿しました。スターつけてくれた方、ごめんなさい。）

ページをめくるといちめんの桜並木があったが蕾は小石のように固い。私は仕舞い込んだストーブを部屋に戻してやることにした。

右足の親指に刺さった破片をピンセットで引き抜きながら、コップは割れたのか、割ったのか、考えてみたけど痛みでどうでもよくなった。

あなたの傍らで書きたいことはないから、今日も羅針盤が定まらず鍵盤は鳴かない。

[id:MarkOfEagle]ったら、こんなところにまで……
無条件で女の子を応援したんですね、わかります。

「愛してる」　「嘘ばっかり」

夏になったら行きたかったあの一等立地のハーゲンダッツが2月の末に閉店していたんだよ。

置いていかれた洋服からあの人の匂いが消える頃、全部、全部、私の手で処分した。

曇ったフロントガラス越しに世界は青く、音の消えた車の中で、ぬるくなった缶コーヒーだけが二人の間を行き来する。

ぐうの音を出せるくらいの逃げ道は用意しておいてあげようか。

吸殻が、彼女の口に出さない言葉を吸い取って、灰皿に積み上がっているように見えた。

乗る電車全て待たずに乗れて、ヨーグルトが安くなってて、携帯の充電が家まで電池一個のままもってくれて、かばんのポケットから百円玉が見つかった、幸せな一日を反芻して布団に入る。