封印したはずの、しまい込んだはずの気持ちがすべてを突き破り飛び出そうになってる。頑丈な鍵を捜そう。
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一行超短編のことを語る
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夕べキミの夢を見たけど、よく覚えてないんだよ、明日キミに会うというのに、約束が何時だか思い出せないしさ、それでも「愛してる」って、一体キミはどこまで頭が悪い女なんだか……だからキミが大好きなんだけどね。
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悪夢の後味をコーヒーでまぎらわす。
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18年前、敵意むき出しで私を睨んだその瞳は今や白く濁っていたが、映らぬ私を捉えると、しっぽをパタリと振った。
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裏の公園に埋めた祖母の指輪が目を出し、夜な夜な私を見つめるので、窓辺に黒い下着とキウイフルーツを供える日々。
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昨日のことのように思い出せる日々だけど、黄ばんだ解答用紙に書かれたへたくそなアルファベットを私は覚えていなかった。
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薄っぺらいムックの87頁と88頁との間から現れたこの世の終わりが手脚を生やしたような異形は、表紙を閉じると途端に消え、未曾有の危機は未然に防がれた。
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無意味な言葉はざらざらと口からこぼれてゆき、部屋はあっという間にひじきの海のようになった。
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叔父から送られてきた神像がその名状しがたく冒涜的な体験の嚆矢だったとは知る由もなかった。
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あなたはリスのように、手に入れたものを埋めて忘れてしまうけど、いつか芽を出し実るのかもね。
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雨といっしょに、花と葉っぱと雲の欠片が降ってきた。
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もっと雨足が強くなれ。彼女の別れの言葉をかき消すくらいに。
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現実を見なくても済むように,僕はそっと眼鏡を外した。
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せめて窓があれば、壁の色くらいはわかるのに。
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一人で生まれてきたわたしは死ぬときもやっぱり一人だった。ただ、とてつもなく長い二人の時間があったので、今しばらく一人で横になっていたい。
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君の直筆はなんだか幼くて、このゴシック体のほうが君の感情を表現するのに似つかわしく思うのだ。
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一人称が「私」から「俺」に替わって、二人の関係は始まった。
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ようやくシャワーを浴びれた嬉しさと、気の抜けたビールの悲しさがあいまって、テレビの灯りの中でコップを抱えてボロボロ泣いた。
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夜風がキャラメルのようにのびるので、桜の下でぼうと突っ立ったままなかなか動けない。
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カップラーメンのお湯を沸かすことすら億劫で、賞味期限の切れたヨーグルトを食べたら、体の芯からつめたくなった。