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一行超短編のことを語る

デートだから、と気張ってミニスカート履いて出かけたら、男から「無理スンナ」と言われ、自分が賞味期限切れであることを思い知らされた。

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枯葉もない枝の合間から灰色の雲に埋まる空を見上げて、「僕は、君が、好きだ。」と考える。

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思い出しながら描いた君の笑顔は、こちらを向いていながら違う誰かを見ている。

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彼の喋る言葉が理解できずに、トーストをかじると、はちみつがじわりと喉に沁みて、少し落ち着いた。

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いつか出しそびれた手紙には宛名だけが書かれていて、封を切ることもせず、引き出しの奥の奥へと、再び押しやった。

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明日世界が終わるから車に飛び乗って、高速の対面交通区間で君の車とすれ違った。

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荒れた唇に塗るものが何もなく、仕方なしにバターを塗ったらお腹が鳴って眠れなくなった。

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ようやく好みの味に落ち着いた煮物をしみじみ味わい、この成長の過程を見守る人のないわびしさを奥歯で噛み締める。

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誰もいないテーブルの向こうにデジカメを向けると、顔認識機能が君を捉えた。

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オフィスのガラスのドアに止まった若いカマキリ、踏みつぶされてゴキブリにむさぼられるアブラゼミ、朝からわたしを「ふにゃぁ〜ん」と誘惑する黒とキジトラのネコペア、すっかり神田川に定住したお食事中のメスのカモ3羽、その頭上をヒラヒラ飛ぶコウモリ……かあさん、今朝も東京は野生に満ちています。いっそ人間などいなくなればいいのに。

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渡された2枚組のCDケースがからりからりと鳴るのは割れてかけらが転がっていたからで、ただそれが寂しすぎて嘆く。

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まさか、それが現実になるなんて……どうすりゃいいのさ?

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そうつぶやきながら、彼女は富士山頂近くの登山道からやや外れた雪渓に雪見だいふくを埋めた。以来、乙女の願いを聞き届けた富士には、夏と長く続く冬だけが訪れるようになった。

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アザーンの響く街を何世紀も歩いた。ボスポラス海峡でアレクサンダー大王に会った。なのに未だに夢は尽きず。月明かりの陰で、あるいは天わたる太陽の下、その姿に懐かしく怯える。

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「あなたは自分が聞きたいように言葉を捻じ曲げてしまうから、私の言葉を無駄にしないために、これ以上何も言わない」

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いっそ蛙だったら気楽だ。雨を待つようにすべてを待ってればいいのだ。でも――古池に飛び込んでも死ねないのが難だ。

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少し太って、はまらなくなった指輪を、せいせいした気持ちで燃えないゴミの袋に押し込んだ。

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彼らの顔が歪んでいたのは、私のレンズのせいだった。私の顔が正しく見えたのは、私が歪んでいたからだった。

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扇風機の風にかき混ぜられるお線香の煙の中で、相変わらず物足りない味の氷スイを口に運びながら、祖母を偲ぶ。

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ぬるいコーラのもの悲しさで喉を湿らし、息の根を止めた冷蔵庫とその中で眠る食物の今後に思いを馳せる。