どこかわからないけど、どこか遠くへ行きたい、と思いながら、インスタントコーヒーの封を切る。
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一行超短編のことを語る
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考えまい考えまい、と、ずっと考えている。
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冷たく固い肌触りのシーツの上で、水を薄めたような沈黙を呑みながら、訪れる気配のない眠りを待つ。
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歩いても、走っても、君の道だ。
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心躍る自分を忌々しく思いながら、風呂上りの爪に紅を刷く。
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奥歯に詰まったカチカチのごはん粒を口につっこんだ人差し指でがりがり掻き出せるほどに、一人。
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脱衣所ほど、家にいる安心感を得られる場所はない。
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子供たちは星捕り網を掲げて、夜の公園へと散らばっていった。
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じいさんは今日も釣れない釣堀で、桃を食っていた。
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夏を駆け下りる夜、優雅なふりでゆれる百日紅の花、そこに孤独が隠れていることを知っている。
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後ろ足で砂をかけたい恥がある。
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両手で抱えきれるだけのものしか、持っていたくないのに。
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行くあてのない乗り物で、よどんだオレンジ色の夜の中を通り抜けていく。
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笑っていい。笑えばいい。吐き出した唾も飲みこんだ真実もいずれ土へ帰る。
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盲目の日々にも空の美しさだけは正しく映った。
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ルームシューズを編みたい、などと思ってしまう8月はどこかゆがんでいる。
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一つ傘の下に入りながら、握られた柄に嫉妬をする。
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痛みも喜びも喧騒も光も苦汁もすべて均されて、一人立つ、秋の夜。
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雨が上がった夜はことさらに冷たく、吐く息と同じ白さで見据えながらさよならを言う。
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着替えもしないでだらしない、と誰かの声が聞こえた気がして、セロリをかじりながら泣き笑う。