アマチュア俳優や素人を多く起用したイタリア映画といって思い出すのは、カンヌ映画祭でグランプリを受賞した2008年の作品「ゴモラ」(ナポリを旧約聖書に出てくる都市ゴモラになぞらえている)。
ナポリに実在する犯罪組織カモッラについて書かれた本が原作 (とはいえ、映画はあくまでも “実話に材を取ったフィクション” という形で作られています。が、かなりの信憑性が… ということらしい)。この本の執筆以降、著者は殺害予告を受けて常に警察の保護下で生活、その後はイタリアから出国せざるを得ない状況になったのだとか。
出演者の中で有名俳優はほんの数人だけ(「イル・ディーヴォ 魔王と呼ばれた男」「グレート・ビューティー 追憶のローマ」のトニ・セルヴィッロ など)。ほとんどの役にアマチュア俳優や素人を起用したこの作品では、公開後にカモッラの実際の構成員が出演していたことが発覚→逮捕、ということもあったという話。
作品評価が高かったわりに日本での公開規模は小さく(カンヌ受賞後3年経ってやっと公開された)、ほとんど注目されなかったことが非常にもったいないと、見た当時思いました。
何がすごいと言って、そのリアリティが。その “生身の感覚” の伝わり具合は、ほかの多くの映画では なかなか味わえないものでした。市内たった1館の上映、自分も合わせて観客4人という、実にひっそりとした状況で見ましたが、この ほかにはないリアリティに「すごい映画だ…!」と興奮した記憶があります。
好みは分かれるだろうなぁとは思います。たとえば、公開当時に雑誌でおすぎが「つまんなかったわ〜」とか言ってたし。マフィア映画といえば黒スーツ、というイメージを持ちなおかつそれが好きだという人には、敵の居る日焼けサロンにTシャツ姿で武器を持ち奇襲をかける「ゴモラ」は、確かにかっこよくは見えないかもしれない。でも 現代のマフィア、それもボスじゃなくて、なんかあった時に実行犯となる下っ端とかは案外こんな感じじゃないのかなぁと想像したら、Tシャツ着て武器を持つ姿も実に怖い。うらさびれて閑散とした街のひどく雑然とした集合住宅で命を狙われたり。これに関わったら自分たちが今後どうなるかなど想像すらできない年頃の少年らが、うまいこと言われて引き込まれたり。出演者の “動き” からも、生身の感覚が伝わってくる感じが強くありました。
素人を起用した映画のすべてが成功するとは限らないですが (イタリア映画ではなかったですが、素人を起用したホラーで結果としてイマイチな感じになってる作品とかあったし)、この「ゴモラ」はかなりの成功例ではないかと。好みの分かれそうな作品であるとはいえ。
