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突然 むかし話をはじめるヤツのことを語る

私が学生時代のことだからふた昔ほど前になる。
「アメリカ、テキサスの田舎にビッグ・ジムという男とファーマー・ジョンという男がいた。
 ある日ファーマー・ジョンがリトル・ホンダで田舎道をのんびり進んでいると、
 シボレーを飛ばすビッグ・ジムが後ろからやってきた。
 『ファーマー・ジョン、遅いやつは邪魔だ。どけ』とビッグ・ジム。
 ビッグ・ジムはファーマー・ジョンを無視するように横をぶっ飛ばしていった。
 ビッグ・ジムは何もなかったかのように車を走らせる。ふとバックミラーを見るとすごい勢いで追いかけてくるものがある。
 (なんだ警察か?何もしてないぞ…?)と思っているとみるみる近づいてきた。そしてすごい速さで脇を追い抜いて行った。
 信じられないことにリトル・ホンダに乗ったファーマー・ジョンのようだった。
 『何が起こったんだ??』と動揺するビッグ・ジム。
 しばらく行くと、今度は前方からこれまたすさまじい勢いで突進してくるものがある。『ファーマー・ジョン!?』
 ビッグ・ジムは顔面蒼白だ。そんなビッグ・ジムの横をファーマー・ジョンは駆け抜け、また見えなくなる。 
 息を整えながら運転するビッグ・ジム。
 『状況を整理しよう。ファーマー・ジョンは怒って俺を挑発しているのかもしれない。それはわかる。
 だがそもそもあんなスピードが出るわけがない。だが確かにあれはファーマー・ジョンだった』
 その時また後方からファーマー・ジョンが近づいてきた。『おわ』と叫ぶ間もなく通り過ぎる。
 束の間の静けさ。そしてまた前方からファーマー・ジョン!
 何度かこれが繰り返された。恐怖におびえながらもビッグ・ジムは現象としての状況は理解した。
 『それでいったいあいつは俺にどうして欲しいんだ!』
 そう思った矢先、激しい衝撃がビッグ・ジムを襲った。ファーマー・ジョンが後ろから突っ込んだのだ!
 車を止めてかけ出すビッグ・ジム。ファーマー・ジョンは息絶え絶えだ。
 『だいじょうぶか!お前を不快にさせたのなら謝る。だがどうしても分からない。
 どうやってお前はあんなスピードで行ったり来たりできたんだ!教えてくれ!』
 ファーマー・ジョンは静かに言った。
 『お前の車のミラー、俺のサスペンダーを引っかけてるぞ…』」
と飲み会で唐突にジョークを語りだした友達がいました。