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映画のことを語る

今年よかった映画をジャンル別に挙げていくよ。久々に愛せないダメ映画に当た
らなかった年な気がします。今年中には『ゴーン・ガール』かサンリオの『くる
み割り人形』を見ておきたいなあ。

・ドキュメンタリー部門
『大いなる沈黙へ』
眠り込むこともなく、3時間近く、見入っていました。ほぼ中世そのままの修道
院生活のなかに、IBMのノートパソコンやバリカン、電子楽器が出てくると、タ
イムスリップしたみたいに不思議な感じを覚えたのも驚きでした。現代なのだか
ら、そういうものが出てきてもおかしくないのに、僧院生活があまりに浮世離れ
しているので、そう感じてしまうのです。

『アクト・オブ・キリング』
人間というもののおぞましさと不可思議さに同時に目を瞠る作品。でも完全版は
見たくない~。長すぎるんじゃないかなあと。いや、ディスクも買ったから、そ
のうち見ると思うけど。

『陸軍登戸研究所』
日本版ミニ「アクト・オブ・キリング」ともいえるこの映画、3時間の長さも上
映会場のパイプ椅子の座り心地の悪さも気にならない面白さ。なんといっても時
折のぞく戦中ティーン世代のブラックユーモアぶりがチャーミング!

『世界の果ての通学路』
子どもたちの苦労はもちろんなんだけど、えっ、インドの三兄弟でその名前?
とか、パタゴニアのこんなところにまでこんな祠が! などなど、植民地政策的
なキリスト教の進出具合、半端ねーな……、という場面などもあり、文化史的にも
非常に興味深いです。

『至高のエトワール ~パリ・オペラ座に生きて~』
日本ではやらないオペラ座新作バレエやコンテンポラリー作品の数々に、まずも
う猛烈に惹かれる。定番クラシック作品より、こういう作品のライブ・ビューイ
ングが行われるべきだと思うなあ。

『アルゲリッチ 私こそ、音楽!』
タイトルからアルゲリッチが音楽論を語りまくる映画だと思って見に行くと、あ
てがはずれます。ちょっとワイドショー的な、アルゲリッチのこれまでの私生活
が、娘によって概観される映画だから。

『柳川静脈』
このシリーズの風鈴感たるや! これが流れてる喫茶店があったら、ものすごく
長居してしまいそうです。

・伝記フィクション部門
『イヴ・サンローラン』
ディスクにあの再現されたショーのメイキングが入るなら、一も二もなく買うな
あ。あ、あともちろん腐女子的には美味しい映画でした。でも、よしながふみの
BLみたいにほろ苦いけどね。でも現実はドラマやマンガじゃないんだから、薬に
逃げちゃだめだよなって思いました。

『グレース・オブ・モナコ』
グレース・ケリーの特徴と魅力って、大人顔に、あのやや垂れ目の子どものよう
な目だと思うので、実のところ最後までニコール・キッドマンの吊り目に違和感
が。

・フィクション部門
『グランド・ブダペスト・ホテル』
完璧に作り上げられた工芸品のような映画の世界の美しさが、却って実際の不条
理な歴史を思い起こさせる、もの凄い作品。映画を見る前に歴史を知っていても、
見たあとに知っても、またこの映画を見たくなる。でも映画のなかの美しい世界
を実現するには、この映画に耽溺しているだけでは、だめなんですよね。

『パラード』
どれもすばらしかったジャック・タチ映画祭のなかで、とくにこれがスクリーン
で見られたのは僥倖でした!

『地獄でなぜ悪い』
映画の魔法が解けるラストシーンは『ホーリー・マウンテン』などでも見てきた
けれど、まさか園子温監督がこういう落とし方をしてくるとは思ってなかったの
で、不意打ちにまたググッと来ました。

・原作あり部門
『THE NEXT GENERATION パトレイバー』
誰がなんと言おうと、毎月1回、見に行ってたこのシリーズは素晴らしいです。
カーシャ祭りとパトレイバーが軍用レイバーを対決する回はとくに出色!

『まほろ駅前狂想曲』
ぎりぎりと締め付けられ、殴られて育った子どもは、そこから解放されるとタガ
が外れるか、自分がやられていた押さえ付けを繰り返すのか、という問題を考え
ざるをえない。後ろに座ってたカップルの、脚をたびたび組み替えて前の座席に
ぶつけてくる男が終映後、「いやー、こういうのもいいよね、ユルくて」と連れ
の女性に言ってたんだけど、これをユルいって断じて終われるって、幸せな生育
歴なんでしょうね、と思った。

『ムード・インディゴ うたかたの日々』
ラスト、ねずみが小説どおりでなくてよかった。原作のラストは原作でいいけれ
ど、映像で見せられると親近感の度合いが違うから、元のままだとつらいなー、
と途中から思ってたのです。でも、彼が最後に持ち出したものが、あの幸せな生
活のかけらなことが、またよけいにさみしい。傑作でした!

『マレフィセント』
百合映画でした。どうもごちそうさまでございました。だってラストのオーロラ
から王子様への笑顔は「ごめんね、わたしは彼女を選んだから」っていうメッセ
ージにしか見えないし。第一、オーロラと彼女の二つの王国が一つになるって、
つまり、そういうことですよね? 日本版の主題歌歌詞なんて、ユーミンの「守
ってあげたい」にそっくりだしなあ。

『テルマエ・ロマエII』
だまされたと思って見てほしい。コロッセオと演し物と観衆の再現具合なんかが、
ただただおもしろく、興味深い!