金田一京助以来、日本の言語学では「日本語(和語)とアイヌ語に共通する語彙は、ほとんどアイヌ語が日本語から借用したもの」という説明がされるようになった。しかしこれは、和人が優位に立ってアイヌ人と関係を持った近世以降の状況によった発想で、証明は不十分だった。
今の学問はもっと発達しており、語彙の共通性などから、異なる言語の間の時間的距離や、関係性について考えることができる。安本美典氏は日本語と他の言語との関係を統計に基づいて研究したし、梅原猛氏は日本語とアイヌ語に神、霊、魂などを指す言葉に共通するものが多いことを発見した。
古代の状況を考えると、アイヌ語の祖語、或いはアイヌ語の祖語に近い言語を担っていた人々が、和語の祖語を話す人々に対して常に劣位だったとすることはできないので、和語側がアイヌ語側から語彙を借用した可能性、或いは和語とアイヌ語に共通の祖語がある可能性について視野に入れてよい。
ヒラという言葉が、和語では単独で傾斜地を指して使われる例を知らない。アイヌ語が和語から「単語として」取り入れたとすると、いつ、どうして、そうしえたのか説明がいる。
比良山とか、黄泉津比良坂とかいうのは、実際の地名、または想定上の地名である。東北地方にはアイヌ語で意味が解ける地名が多いように、地名にはその地域ですでに使われなくなった言語でも残りやすい。
比良山の『ひら』はアイヌ語由来か?のことを語る
