「何も遠っ走りすることはねえや。あそこにサツが居るじゃねえか。あいつに言ったらいいや」
「いや、いかん。絶対にいかん」男はひどく狼狽した。
「こういうことはちゃんとした身分の、捜査課長か何かに報告すべきもんだ。あのへんのマッポはだめだ。どんなカン違いするかわかったもんじゃねえ」
「マッポ?」伏見は珍奇な単語に興味を感じた。「マッポって何だい」
「いいあんちゃんが知らねえのかい」男はちょっと軽蔑的に言った。「マッポはマッポさ、間抜けなポリってことだよ」
「ああ、なるほど。間抜けのマにポリのポか。知らなかったな」
「そうかい。千葉じゃ常識だがね。じゃ、アバヨ」
(天藤真『遠きに目ありて』)
勝手に引用のことを語る