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勝手に引用のことを語る

(前略)現在、小説はむずかしい時期を迎えてるとよく言われます。人は本を読まなくなった。特に小説を読まなくなったということが世間の通説になっています。しかし僕はそのようには思いません。考えてみれば我々は2000年以上に渡って世界のあらゆる場所で物語という炎を絶やすことなく守り続けてきたのです。その光はいつの時代にあってもどのような状況にあってもその光にしか照らし出されない固有の場所を持ってるはずです。我々小説家のなすべきは、それぞれの視点から、その固有の場所をひとつでも多く見つけ出すことです。我々にできることは、我々にしかできないことは、まだまわりにたくさんあるはずです。僕はそう信じています。(後略)
11月26日付毎日新聞東京本社版掲載「村上春樹さんメッセージ・物語の光を信じて・毎日出版文化賞受賞のあいさつ」