【悪魔が来たりてかぼちゃ煮る】
小皿にサラダじゃなくてかぼちゃの煮物が出された。
「なにこれ」
「かぼちゃの煮もの」
いや、それは判るんです。さすがに。でも、唐突に出されたその料理にちょっとだけ戸惑いを隠しきれなかった。だって、カレーライスにかぼちゃの煮つけ?さては、俺をきいろに染める気か?
「ああ、ひょっとしてレタスよりかぼちゃが安かったの?」
「いや、ハロウィンだから」
そういわれて、カレンダーをみる。確かにハロウィンだよ。ちょっとだけ、頭の中で灰色の脳細胞が回転する。ああスーパーで、かぼちゃ+ハロウィンで、なにかしようと思いついたのかな。そうだとしたら、なんかかわいい。かわいいっていうと、ぜったい怒るからいわねーけど。だから飲み込んで、言葉をさがす。さがしながら、そばまでいって、髪の毛をくしゃくしゃにしてやりたくなった。
「かぼちゃの煮ものなんて、よく作れたね」
あーなにいってんだ俺。もうちょっと気の利いたこといえねーのかな。
「よく作れた、ってなんすかそれ」
キッチンから出てきた相手は、やはり言葉が過ぎたみたいで、少し困った表情をしていた。ちゃんと勉強してるんだよーこれでも、っていう小声のぼやきつきで。
「あー、やはり美味しく見えそうにない?全然箸がすすんでないね。ごめん、付け焼き刃で作ったものだしなー、照りが難しいんすよね」
目の前で拗ねてみせられるとちょっといいもんみたな、と思うと同時に少しなにかの呵責を感じちまう。で、隣に座って、丁寧に箸を使ってかぼちゃを箸で運んでくれようとするので、されるがままに
「や、美味しそうだよ」
と口をあけてかぼちゃを食べた瞬間、
舌をなにかが刺激した。
「!」
「wwwww」
貴様、かぼちゃの見えない面にカラシを塗ったな!鼻にカラシがどストライクした結果、涙目になってるであろう俺を、面白そうに奴は眺めてた。眺めながら、飴玉をひとつ取り出して封を切って口へ放り込む。放り込んだあと、ネクタイをひっぱりながら耳にささやくように彼は云ったのだ。
「かまってくんなきゃ、悪戯しちゃうぞ」
ハロウィンの夜にはたぶん、悪戯好きの悪魔が居る。
ハロウィン超短編まつり(>w<)2010のことを語る