ねえ、こんど楠田くん(仮)の家に行ってもいい?と彼女は言った。
あ、なんとなくいいな、と思っていたので、SNSのidも交換したし、何回か一緒に食事もした。自炊の話になり、明太スパの話をしていたら料理得意だから、ってな話になって、へええ、じゃあ今度コーチしてよ、とものの弾みで云ってしまったら、家に行ってもいいの?ってなことになったわけで。酔っぱらっていたので、いいよ、と答えたんだけど、うちに帰って、玄関を開けて、めええという声を聞いたら酔いが醒めた。
うちには電気羊がいるんだった。さてどうしよう。
正直は最善の策というから、電気羊をちゃんと紹介するべきだろうか。つか、紹介したとして彼女は電気羊って理解してくれるだろうか。猫ならかわいー、といってくれるかもしれないが、羊はどうだろ。愛嬌ふりまくやつでもないしな。つか羊飼いじゃないのに羊飼うって、変な奴と思われないか?ああ、彼女が来るあいだだけ、誰かに預けるか…と思ったけど、うちの電気羊は誰にも教えてない。親に説明するのも面倒だしなあ。電気羊と同棲しよって、あんたなにしとるん?と親に云われるは目に見えてる。やむを得ない、スマホを取り出して、OKGoogle、電気羊預かってくれるところ教えて?と頼んだら、沈黙を貫きやがった。ヤフー知恵袋にでも相談する?
うーん、どうしよう。いっそこのまま彼女が来る日、やつと一緒に羊が丘へ逃げようか…
と思ったところで目が覚めた。電気羊かってなかった。
うちの電気羊が…のことを語る