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しまのことを語る

超短編
高島屋と紀伊国屋を結ぶ連絡通路は、空港に似ている。
日がさんさんと差し込むガラス張りの通路、靴音を吸い込むじゅうたん、飛行機が飛び立つのが見えないのは残念だが、代わりに電車も車も人も行き交っている。
紀伊国屋に足を踏み入れると、洋書の匂いに包まれる。そこはかとない異国の空気。
微小旅行。
なんて、こんなもので旅行欲が満たされるわけがあるか。
心の中で毒づいて、読みもしない洋書を一冊、買う。