id:nekoana
勝手に引用のことを語る

 『かみさまからのおくりもの』が出版されてまもなくのことです。「樋口さんは子どもが一人だし、まだ小さいからわからないだろうけれど、やさしいとか、歌が好きとか、そんなものをもらって喜んでいたって仕方がないわよ。頭がいいとか、足が速いとか、能力と言えるようなものが大事なんだから」と、もっと大きいお子さんを持ったお母さんからいわれました。
 そのとき、「私は絶対にそんなことはない」といえる自信はありませんでした。「いつか自分もそんなふうに思う日がくるのだろうか・・・・・・」とちょっと不安になったのです。
 私は、自分の本を自宅に飾るということは普通しないのですが、この絵本だけはいつも表紙がパッと見えるように、長い間置いていました。そのお母さんにいわれたことを思って、そうしたのです。
 もし私が、子どもを育てていく中で「やさしい」よりもっといいものをもらったほうがよかった、と思うようになったら、この本そのものの価値を否定することになると思ったのです。ですから、そのとき、その方にいわれたことは、私が意識的に生きるためにとてもありがたいことでした。
 
 
ひぐちみちこ「子どもからの贈り物」