多くの人が体験して知っているように、
「保険や車や住宅メーカーのCMに出てくるような
『絵に描いたような家族』」は
ほとんど、実在しない。
なのに、それを
「普通の家族ってこんな感じだ」「家族ならこういうふうなはずだ」
と思うために、
「あるはずのものがない」と苦しんでいる人が、
少なくない。
「家族」という概念には、
そんなふうに、暴力的なところがある。
「あるだろう、と思ったのに、ない」
ことに傷つくのは、
愛されるはずの側ばかりではない。
「親は子どもを愛する」ことになっているのに、
子どもへのあたたかな感情が胸に湧かなくて
悩み苦しむ人もいる。
もし、他人であったなら、
「この人を愛さなければならないのに、愛せない」
などと悩むことはないだろう。
でも。
「愛情らしい感情が感じられないのに、
それに耐えて無償で世話をする」ことは、
よく考えると、愛の行為でしかない。
自分と戦って、「相手のため」に力を尽くしているのだ。
これが愛でなくて、なんだろう。
石井ゆかり「手のひらの言葉」vol.1 家族 - http://www.mylohas.net/2014/05/038113iy_family.html