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読書のことを語る

なんくるない よしもとばなな

混んだ書店の通路を塞ぐように長時間座り読みをしたバツイチのヒロインがレジで店員に切れられ、「こんなときクレーマーとして優秀だった夫がいてくれたら」と凹んだ後「店員の悪意を呼び込んだのは自分の自己肯定感の不足が原因だ」と解釈して衝動的に沖縄旅行へ行く話。
どんなに長時間深刻に悩んでもけして本当の問題には目を向けず、自己の正当化のためには骨身を惜しまず断固反省しない人がよく描けている。

こういう人の世界にはものすごくいい人と頭がおかしいひどい人とどうでもいい人の三種類しかいないんじゃないか。

観光地の飲み屋と混雑した書店の待遇を比較して沖縄を礼賛する前に、欲しい本の目星は図書館でつけたらどうだ。しかしこのエピソードこそがヒロインの真の離婚理由を暗に示しているのかも知れず、「藪の中」的な叙述トリックなのだと考えて後半を読むと興味深い。

著者の居酒屋ワイン持ち込み事件、また銭湯刺青入湯事件などを彷彿とさせ、著者を身近に感じる一作。