id:kutabirehateko
読書のことを語る

ピノッキオ

TDLのピノキオアトラクションのあまりの不気味さに興味が沸いて原作を読んだ。刹那の欲望に脊髄反射で飛び付くことをモットーに生きる木彫少年ピノッキオが、あの手この手の窃盗、詐欺、殺人者に何度も身ぐるみ剥がされながら、文字通り九死に一生を得て更生するイタリアの成長物語。

章毎にあらすじが書いてあるのに絶妙にネタバレが回避されていてまったく先が読めず、その超展開ぶりにすっかり狼狽させられる。モノを言うコオロギは登場するなりムカついたピノッキオに叩き潰され、ゼペット爺さんは登場するなりよその爺さんとカツラを掴み合って大喧嘩を始め、嘘をたしなめる妖精は何度も嘘をつき、「これがあのよいこのお話『ピノキオ』か」と目を疑う。原作を先読んだ子どもはディズニーアニメを鼻で笑ったんじゃないか。

ところでこの話には最初から最後まで妖精以外に台詞のある女性は雌猫一匹出てこない。町中に女性が行き交う描写すらない。もしかして厳格な宗教的背景でもあるのか。確かに色欲を除く様々なタイプの誘惑と堕落した者の末路のサンプルとして優れた本だったけれど、道徳の教本にしてはあまりに破天荒でどこまで本気なのかがわからない。

「『ちゃんとした子ども』なんかより自分の夢を持った子どもの方がいい」
とか高度成長期呆けした少女小説家の甘ちゃん解説とか要らないから作者と作品の背景を知りたかった。

丸腰無学無知無教養保護者なしの子どもが貧しい無法地帯で「自分の夢」を追うとどうなるか、最初から読み直せ、お前はロバ商か。と思った。

とにかくとても面白いので年齢によらず一読再読の価値ありだと思う。