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読書のことを語る

木曜日に生まれた子ども ソーニャ・ハーネット

子供の特殊能力を描いたファンタジーかと思ったら、トリイ・ヘイデン並みのリアリティーに満ちた話だった。
いや、確かに不思議な話だし特殊能力なんだけど、想定外の特殊能力だった。

ある日突然穴掘りに目覚め、行くところまで行ってしまった弟の話。
ドリラーっていうゲームをご存知の方に読んでいただきたい。
大変な貧しさの中でふにゃふにゃのマルコ祖父さんみたいに頼りないくせに怒りんぼの父、
ただただ哀れで悲しい母と、ごく普通の兄姉、ドリラーになってしまった弟、そして小さな末の弟を見つめるヒロインハーパー。

主人公のハーパーの視点が幼児から子供へ、そしてティーンへと移り変わるさまがリアル。
作者はいったいどうしてこんな特殊環境での圧倒的な貧しさを迫真に迫って描写できたのかと驚く。見たんか。むしろ経験済か。
でも不思議にあっさりした印象で、暗い気持ちにはならなかった。久しぶりに本を通して別の人生を経験した気持ちになった。