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工夫のことを語る

鉄腕DASHで魚うどんを作ってるのを見て、おばから聞いた話を思い出した。
父が中学生の頃、祖父が入院して祖母は病院の付き添いと仕事でいっぱいいっぱいになった。で、家の食事のしたくは通学の弁当含めてすべて父がしてたんだそうだ。父には姉も二人いたのだけど、その頃には姉たちも嫁に出てたかなんかしたんだろうと思う。妹も数人いたけど、たぶん中で一番料理が好きでかつ上手かったのは、父だったんだろう。
で、ある日父は、料理の本で鯛そうめんのレシピを見つけて、それを晩ごはんにすることにした。
ほぼ仕上がって、おばも味見をさせてもらったら、もうすでにものすごくおいしい。でも父は、納得いってなかった。というのも、レシピにある
「化学調味料」
というのが何かわからなくて、入れられないでいたから。今となってはおそらく味の素だろうとわかるのだけど、当時の父やおばにはまったく知識の外だった。
「兄ちゃんこれもうおいしいよ、これでいいじゃない」
とおばが言っても、どうしても父は納得しない。わざわざ書いてあるからには、入れたら絶対さらにうまくなるのだ、と。
そして考えたあげく思いついた、うちにあるものでもっとも「化学調味料」っぽいものを入れたのだった。
サッカリンを。
人工甘味料の激しい甘さで台無しになった鯛そうめんは、どうしても食べられなかったって。
その晩のごはん、おかずをどうしたかは、そういや結局聞いてない。