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新日本プロレス/G1のことを語る

8.8ジュース・ロビンソンVSジェイ・ホワイト戦

ジェイの完璧さが最も密度濃く詰まった試合だった。
そしてこの夏のジュースはモクスリーの登場でそれまでとは全く違うジュースになっている。
道場で共に過ごした二人が、他の相手では見られない表現をしていたと感じた。この夏だけ、今この時だけのものかもしれないし、これから何度も繰り返される、定番商品になるものの初めの一歩だったかもしれない。多分その両方。
ジェイは序盤こそスカすような身振りをしていたが、他の試合に比べればそれはずっと少ない。最初から最後まで徹底的にジュースの左膝を攻撃する。一点攻めが後々効果的なのはセオリーだが、それが本当に緻密だ。試合の組み立てがとにかく緻密。それでいてわかりやすい。初心者の私にも「あああれがこう効いてくるのか」と見せてくれる。
ジュースは立派な信頼できるレスラーだが、この試合を作ってたのはジェイ。これ別にどっちが上位ということではなく。今回はそういう分担ってこと。とはいえ、ジェイの試合はジェイが作ってることがほとんどなんじゃないか。そこのところの技量が図抜けてるんとちゃうんか。憎たらしいくらいに完璧で文字通り唸ってしまうのだ。いや、わし腕組んで「ううう」言いながら考え込んじまったYO。
さて、ジェイは攻める時は集中的に最速最短の動きを重ねる。徹底的に・コテンパンに・完膚なきまでに・非情にたたきつける。
しかしジュースは何度も立ち上がる。
見ている人たちが自然に「ジュース頑張れ! ジュース頑張れ!」と声に出してしまう。その空間をジェイが作ってる。これなんちゅうヒールのお手本。
ジュースはモクスリーにやられて以降、ずっと難しい顔をしていて、思い詰めているようにも見える。「シリアスモード」などと言われているが、一方でリングの中のレスリングではジュースがもともと持ってる真面目さみたいなものがいい方向に出ていて、なんちゅうんかな、きちんとした感じがするのである。明るくて煩いジュースとがっさりしたプロレスはそれはそれで調和はとれていたのだが、勝負としては雑でスキが多いのは否めなかった。それがキリッとしてきた。締まってきたのは顔つきだけではない。
ブレードランナーをくらわない。返し続けるのだ、ジュースが! これはジュースいけるか!? というところで、ああそうか、こいつにはこれがあった、と思い出す。ジェイはギブアップ技も持ってるのだ。死角無し。
このジェイにはもう外道の介入は要らないことは明白で、むしろ付け入る隙としてのみ外道の存在があるのではないか。対戦相手によってはそれでバランスが取れる場合もあるか。ジュース戦にそれが必要だったかどうかはわからないが。
ジェイが高い技量を持ったスター選手であることは間違いないが、相手がジュースだったからこそできた試合だと思った。道場で培った消しがたい信頼が根底にあるんじゃなかろうか。
観戦慣れした人が見ればまだまだ未熟なところが多い試合だったかもしれないが、今のこの二人ならではの空間を私は楽しんだ。
ジュースには天賦の明るさがあると思うが、サービス精神が旺盛なのか、ともするとちょっと無理してんのとちゃうの?というくらいにやりすぎることもあった。最近の怖い顔はそれはそれで無理してるんだろうが。
しかし、この試合に入場してきた時の彼は、厳しい顔ながらも以前の感じが少し混じってきていて、いい塩梅に調和の気配を見せていたと思う。追い詰められた感じが薄まって余裕と意欲が感じられた。必ずいい試合になると信じてたのかもな。
元々持ってる素の人柄というのはその人固有の財産で、彼のそれは温かい朗らかさかな。それと確かな技量が結び付けば、他に似たレスラーはちょっといないんじゃないかと思う。ジュースは唯一無二のレスラーになれるはず。数年前に作られたドキュメンタリー映像など見ると、ジュースを嫌いになるのは難しい。ジュース頑張れ。
ジェイのこと何回か書いてるけど、すげえなって思うのと好きっていうのはまた別なんで、ジェイがとても好きなレスラーかというとそうとも言えんわな。自分にとっていい試合をするだろうと信頼できるレスラーになってきたとはいえる。