承前なのですが、小林秀雄さんの文章はとても美しくて、読んでいて頭がよくなる感じがするんだけれども、ぼくはこの人が一体何を考えていたのかがよく分りません。学生時代にものすごく熱心に読んでいて、たぶんすごく影響を受けているんですが、村上春樹さんのエッセイに「コバヤシヒデオ」と登場するくらい、本当にきれいに著者の考えが記憶に残っていません。まるで絵を見るように、音楽を聴くように、流れて消えていく思考ってあるんだよな、と。全然『考えるヒント』にならないのに『考えるヒント』というタイトルがついてるこの本がすごい。学生時代に、本棚の一等席に鎮座していましたが、生きていくのにあまり役に立っていないなと(笑)。
小林秀雄のことを語る