@kodakana_ship10
歴史小説のことを語る

新作『斑鳩寺に血は流れず』第一話「女帝の風韻」を公開しました。

本作は、山背大兄が死に追いやられた事件について、勝者により「作られた」歴史観を解きほぐし、考証と想像により、当時の実際を再現しようとする企てです。

なお副題に使った「女帝」というのは、決して後世の造語ではなく、日本律令の正式な用語として有ります。つまり令制では女帝が存在しうることを予定していて、それを当然に導く前提として推古帝や持統帝の実践が有ったのです。これから語るのはその「女帝の世紀」の一幕です。

語りは、炊屋姫尊(推古天皇)の治世が、まさに過去のこととなろうとしている時から始まります。跡継ぎに指名されていた上宮太子(聖徳太子)は六年ほど前に没していて、王座争いの予感が人々の心中を静に掻き乱します……。