@kodakana_ship10
日本語のことを語る

(承前)続きです。日本語の語順の文法的な、理屈にとどまるのではなく、作文に役立つような理解の仕方について考えています。「私は本を読む」のような模式的な短い文で済むことは実際には少ないので、もっと実際的な長い文での言葉の出し方をどう決めたら良いかということでもあります。

読み書きのために

繰り返しになりますけど、ここでの主題は、日本語の語順に対する理解を、読み書きの訓練につなげることにあります。

私は国語の授業でする作文というのが大嫌いで、書くことは苦手な方でした。1999年に出た大野晋の『日本語練習帳』は、自分にはあまり役に立たなかったと思います。この本は文体はやさしいのに、最後まで読んでも意義がよく分からない。まるで歴史の教科書みたいだという感じです。分からなくても書いてある通りに練習すれば良かったのかどうか、ともかく一度読んで読み返さなかった思い出があります。

今も売っているので多くの人には役に立つのでしょう。

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それから私が独学の方法として考えたのは、「書き言葉としての日本語は、漢文の読み下しから始まった」はずなので、「漢文まで戻ってやり直す」というものでした。正格漢文には必要でない訓点や、慣例としての読み方などは構わず、「現代日本語を母語とする私が、漢文をどう読むか」という取っ組み合いです。所謂漢文訓読調が確立したのはそう古いことではなく、読み下し方にも変遷があるので、現代語訳をするのではないけれども「今の読み方で読んでみる」ということです。日本の知識人は長い間、和文を書くにも漢文を意識してきたはずなので、ある意味では「歴史的に保守的」なやり方とも言えます。

この訓練法には、一定の成果はあったろうと思います。しかし、この「古典漢文を現代日本語の形式に開く」訓練によっては解決を与えらないものとして、日本語の語順という問題が浮き上がってきたということになります。

「整合的な SOV 型」?

語学関係の本では、「ロシア語の語順の自由度の高さは、英語よりも日本語に似ている」とか、「古期英語は語順の自由度が高く、その点では日本語と似ていた」とか書いてあるのを見ることがあります。日本語は「語順の自由度が高い」という認識が一般にあります。

それでも日本語の語順は、専門的には「整合的な SOV 型」なのだそうです。言語学者に言わせると、SOV 型の言語では、

  • 修飾的成分は名詞の前(高い-山)
  • 接置詞は名詞の後(山-から
  • 比較構文では、関係詞と形容詞は名詞の後(山-より-高い
  • 疑問詞は文末(山は高い-

という順序が現れると、整合的であると言うのだそうな。またこういった順序のことを「支配の方向」とか言うのだそうなこの用語はここでは憶えておかなくてもいいです

なお参考文献『世界言語のなかの日本語』松本克己、2007。

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まあそれはそれとして、そもそも日本語が「SOV 型である」という理解の仕方についてです。これは間違いが無いようでもありながら、S/O/V という成分を、外国語、特に英語や中国語のそれと対応付けて理解しようとさせてしまうことで、日本語の文法そのものに対する理解を妨げる弊害がありはしないかという気がします。日本語の語順自体をより良く理解する捉え方が、この他にあるのではないかという問題です。

ぐるっと回って、前回の「語順が違う」では腑に落ちない、という所にもつながってきます。

では、次回、解決編?