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映画のことを語る

録画していた『ある天文学者の恋文』を見た。
悪趣味な映画だと思った。途中で医者が彼について言ったことが、まさにわたしが思っていたことだった。
恋愛ではなく親子の話であったなら、ここまでナルシスティックにならなかったような気がするし、わたしはもう少し納得できたような気がする。

途中からずっと、オゾンの『まぼろし』をもう一度見たいなあ、と思いながら見ていた。
夫が行方不明になり(恐らくもう自死している)、宙ぶらりんに取り残された妻の物語で、これとは設定その他違うのだけど、でも彼女らが置かれてる混乱は似ていると思った。
『まぼろし』を見たのは、わたしの精神状態がかなりまずかった頃だった。「もう死んだとちゃんとわかるようにしないと、遺された人間はずっとまぼろしを追い苦しむ」と気づかせてくれた映画。おかしなことだけど、そうわかったことが、あの時のわたしには大事だった。
『ある天文学者の恋文』はその対極にある気がする。