受験の手続きをしながら、悩むことがあって、車を走らせて、亡くなった祖父が愛用していたヤナへ行った。安く済む小旅行だ。
何とか見つけて、お店に入って、料理を堪能しながら、祖父はあらゆるものの美的基準がはっきりした人だったんだなと感じた。
まずお店がとても静かで、日陰にあり、小さくて清潔だ。景色もよく、料理の質も高い。なおかつ価格に妥当性があり、サービスが行き届いている。通常のヤナとは、真逆のお店なのだ。
7年前、祖父が亡くなる直前にぼくは勉強を始めたのだった。「絶対に受かって、独立して、結婚するから」と祖父と約束したのだ。
受験票には「やむを得ない場合は、今年の受験資格を来年まで延期可能」と書いてあったんだけれども、ぼくは迂回して受けることはやめた。
ダメだったら、また立ち上がって、受ければいいことだ。とにかく生き延びること。一日一日を精一杯生きて、力のかぎりを尽くすこと。
オフィスへの帰りがけに、お金を振り込み、手続きを完了させた。じいちゃん、ぼくの選択は間違っていないよね?あとは力のかぎりを尽くすだけだ。
鮎の塩焼き