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/歴史のことを語る

熊野聰『ヴァイキングの経済学 略奪・贈与・交易』(再読)


「経済」とはなにかというと、「人が生きるために必要と感じる物を獲得するための具体的な活動」であると言うことができると思います。生きるために必要なものを獲得する行為は是認されざるをえず、またそれを妨げる行為は否定されることになるので、そこから善悪を判断する倫理観も規定されてきます。経済の基礎は食料であって、農耕と遊牧とでは経済が大きく異なり、したがって倫理観も違うことになります。農耕的社会と騎馬民族の間の衝突や征服といった歴史的事件も起きるわけです。

そんなことで、「何が起きたか」を羅列するような教科書的歴史観をクズカゴに捨てて、「どうして起きたか」という有機的な歴史の理解に至るためには、歴史的経済に対する理解が必要だと思うわけです。それがないと、どうしても現代の経済に基く倫理観で歴史を見てしまい、昔の人の行動の原理が分からないばかりか、悪くすると「昔の人はバカだったからそんなことをした」というふうの、「現代人はバカになった」と言われてもしかたないような所に行ってしまいます。

たとえば「赤穂浪士はなぜ幕府の法に反しても吉良邸に討ち入ったか」ということも、それが倫理的正しさを認められうる行為だったからで、その背後には武家社会の経済構造があるわけです。そえを現代人の感覚で「単なるテロ行為だ」と言ったって、当時の状況に対する理解としては、全くの無意味ってもんです。

いわゆるヴァイキングの時代に関しては、その経済活動についての研究がわりと手厚く行われていいるという印象があり、何冊か読んでみたことがあるものですが、今回数年ぶりに読み直してより多く得るものがありました。このように行動・倫理・経済の関連で歴史を理解していけば、当時を生きた人の現在進行形の視点に近付けるってことです。

isbn:4634491303
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