月明かりの下、近くにある川沿いの道を一周走ってきた。風が吹いていて、波が立っていて、月の光を反射していた。そこには思わず息を飲むほど美しい黒と銀色の風景が待っていた。
そう言えば、今年亡くなったぼくの祖母の名前はこんな景色からつけられた名前だったなと思い出した。妹の話では小さな頃に祖母は母親と一緒に月を見るのが好きで、ぼくにも今日は満月だよとよく話しかけてきたのだった。
100年以上前、ここには今よりも、ずっと長く深い川の流れがあった。明治に生まれた祖母の父と母はぼくが見た以上に、何か途方もなく、美しく愛に満ちた景色をそこで見ていたに違いない。この風と波と光を見ていたのだと確信する。お通夜の晩にも、そんなことを強く思ったのだけれど、100年にわたる忘却の歴史を経て、ぼくは4世代前の当時20代だった祖先の瑞々しい感性と深い愛に満ちた気持ちに触れた気がした。
100年前、そこには確かにぼくと同じように何かに悩み、必死で生きて、家族を愛して守る人がいたのだった。
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