1年ぶりに女性とデートをした。仕事が忙しくて4ヶ月放置していたのでフランス料理の店に連れていった。直前までカメラマンなしでPV撮影をしていたり、その日には過去22年の人生を根本から揺さぶる出来事があって、ぼくはレストランへ向かうタクシーの中で、極度の疲労と精神的な消耗で猛烈な吐き気と不安に襲われていた。なので、彼女が時間に遅れて来ても謝らなかったり、予算内なら何でも頼んでもいいよと言うぼくの好みは全く何も聞かずに注文していても気にしなかった。ぼくと彼女は別の宇宙からやって来て、たまたま同じテーブルを前にしてる感じだった。ぼくは肩書のわりにダメダメで前途多難な人生の状況を自虐的に話して、会話を楽しむことにした。目の前にいる女性は美しくて賢いけれども、ぼくは彼女には1ミリも好意を持っていないし、相手もぼくの肩書や収入にしか興味を持っていなかったように見えた。だから、ぼくは自分の魂や哲学について語りつつ、相手の内面の奥深くにあるものを探ろうとした。「この人をこの人として成立させている自由で安全な魂って何だろう?」と。お店を出る寸前に、その片鱗がチラっとだけ見えた。会計はもちろんぼくが全部払ったけれども、彼女は飲み物を含めても完全に予算内に納める注文をしていたのだった。そんな感じで、ぼくは彼女の中に好きになれる魂を探していて、彼女は自分が求める人生にふさわしい条件がぼくに備わっているかを観察していて、お互いを完全に見誤ってしまっていた。切ないけれども、もうそれで終わりだった。「好きでもない相手と、どうして結婚前提な話ができるのか?」がぼくの意見で、「結婚前提でない相手を、どうして好きになれるのか?」が彼女の意見だった。かくして人を好きになることはとても難しいのだった。
自分(id:happysweet55)のことを語る