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はてなハイカーたちの小さい頃の話が聞きたいなのことを語る

雪が解け、ようやく春の兆しを感じられる頃になると、家族みんなで山菜を採りに山に出かけた。
目指すは野生の「たらの芽」だった。
クルマで30分くらい走った山の中に、うちだけの秘密のポイントがあるのだ。
誰も知らない秘密の場所だなんて、ちょっとカッコよくて、ちょっと誇らしかった。

たらの木には、たくさんの刺があって危ないので、採取するのは大人の役目。
子供だった自分は、祖父と父の手際の良さやカマ捌きに見とれながら、採れたてのたらの芽をかごに入れる係。
どんどん集められる小さなたらの芽を、宝物のように大切に扱った。

もちろん帰ってからすぐに天ぷらに。機嫌よく鼻歌交じりに揚げていく母。
独特のモチっとした食感と、ふんわりした心地良い春の香りが、子供ながらに大好きだった。
「この味を知っているのは贅沢なことなんだぞ」と、毎年のように父が言っていた。

そして30年あまりを経た今、うちだけの秘密の場所は、もうどこにあるのかわからない。
祖父も、父も、もういない。
でも、そのたらの芽の味は、今でもはっきりと覚えている。
家族との思い出の味。たらの芽の味は、本当に贅沢で、幸せな味だった。