今は昔、竹取の翁といふものありけり。
ある日、翁が竹を取りに竹林に出かけると、一本の光輝く竹があった。竹取職人の朝は早い。平素であれば、仄暗い竹林の中で長年培ってきた竹取技術と竹を見極める勘を頼りに竹取作業を行うところだが、その日は光輝く竹が辺りを明るく照らすおかげで翁の竹取は大層捗った。日が昇り辺りが明るくなるにつれて、光輝く竹に光輝くというほどの輝きを感じることはなくなり、昼ごろにはだいたいいつものペースの竹取になった。しかし便利は便利である。次にこのエリアに来るのはいつになるだろう、その時まであの竹が光ってたらいいな、と淡い期待を抱いて、翁は光輝く竹を取らずにおくことにした。
打ち切り童話のことを語る