「美人は得説と私」
会社勤め時代、席の近いところに本格的な美人がいた。私は今同様、ちまちました作業をしているとすぐ飽きるので、そういうときは彼女をしげしげと「美人だなー」「かわいいなあ」と眺めて、また作業に戻るということを繰り返していました(今とやっていることが同じである)。時は流れて、彼女が恋人と別れて、それなりにやさぐれた飲みと愚痴に私がお付き合い申し上げていたころ、最初は「うむうむ」と神妙につきあっていた私も回が重なるにつれて雑な気持ちになり、つい、「(あなたは)かわいいから大丈夫だよ!」と言ってしまった。彼女はさっと顔色を変え「大丈夫じゃないよ! かわいくったって、大丈夫じゃなかったからこうなってるんじゃない!」とめずらしく大きな声を出しました。
彼女が美人で得をしたのはまわりにいる人間だけで、彼女は別に得してなかった、ということです。全ては人による……。おわり。
雨子のことを語る