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好きなやりとりのことを語る

「悦ちゃん、蛍狩いうたらな、───」 と、妙子が助け船を出した。 「ほら、よう絵に画いてあるやろ、───お姫様が大勢腰元を連れはって、長い振袖のべべを着て、こういう風に」 と、ちょっと手つきをしてみせながら、 「───団扇を持って、池の周りや土橋の上で蛍を追い駈けてはるやないの。蛍狩いうたら、ああいう風に友禅のべべを着て、しゃなりしゃなりして行かなんだら気分が出えへんねん」 「そしたら、こいちゃんは」 「こいちゃんは今時分に着る余所行きのべべがないねんもん。今日は姉ちゃんがお姫様で、こいちゃんはモダーンガールの腰元や」