相州から臨む房州の山並みはおっとりたおやかに寝そべって見えるのに
近づいて見れば、人を寄せつけない広葉樹生い茂る急峻な山地と絶壁。
走水を船出した日本武尊もきっとそうだったんだろう。
だから、静かな東京湾を少し見下したのかもしれない。
怒った風の神が吹き荒れる時化の海は方向感覚を狂わす。
行き先を見失い、波に弄ばれる船から己の命と引き換えに
「海よ鎮まれ」と身を投げた弟橘媛の目に房州はどんなふうに映っただろう。
その海底を走るアクアラインで相州へ戻る車中、そんなことをふと思った。
たびにっきのことを語る