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マンガの話のことを語る

九井諒子 「竜のかわいい七つの子」

「竜の学校は山の上」が話題になった九井さんの新作短編集。
「七つの子」ですから、全部で7つの話が収められています。
現実の中にするりととけ込むファンタジー、という手法が本当に巧み。

全体の構成も読みやすく、
典型的な西洋ファンタジーで幕を開け(第一話『竜の小塔』)、泣いたり考えさせられたりしみじみしたりしながら、最後はどたばたコメディで幕。(最終話『犬谷家の人々』)
ファンタジーと言えど、突飛な設定に頼らず、話の芯は登場人物同士の関係や彼らが住む世界の考察にあり、設定を含む話の背景には緻密な世界観が垣間見えるのでとにかく厭きない。絵としての書き込みが多い、というのではないが、話自体に余白と、(書かれない)書き込みが多いのだ。

中でも、私が好きなのは、「狼症候群」という難病を抱える青年と、その母親との関係を書いた『狼は嘘をつかない』
 母親は、青年の病気をテーマにしたエッセイ漫画を描いており、それによって生まれる確執が
本人と、そして息子の病気を支える母の、それぞれの葛藤をあぶり出している。
何より、手法が斬新!(思わず、本当にそう言うエッセイ漫画が有るのか、と調べてしまった)

思わず涙する『金なし白禄』は、最終ページ、最後のコマ運びに唸った。