水田 英実ほか著『中世ヨーロッパにおける女と男』溪水社 、2007。
おじさんたち、ジェンダー史ってしってるう~?
などといいたくなってしまった本。
ごりごりの学術書かと思ったら、脚注がないヘンな作り(新書的)の本。
「女と男」といいつつ、女性研究者は執筆者におらんしな。
脚注ついてないと不便だしプロの研究者としてどうかと思うよー。入門書にしてはテーマが個別的過ぎるし。
執筆者自体の意見がどこにあるかわからないという、論文として一番やってはいけないことをやっていいる。あと、情報のソースがたどりづらい。
山代宏道「アングロ=ノルマン期イングランドにおける女と男」
原野昇「フランス中世文学にみる女と男」
だけ読みました。
前者は概説的なので、引用されてた吉武憲司「スティーヴン治世期国王行政と王妃マティルダ」(イギリス中世史研究会編『中世イングランドの社会と国家』山川出版社、1994)を読んでみたいな。中世期の女性の政治参加がわかりそう。
後者は文学者のくせに文学解釈が頼りないというか、どういう理論を使いたいのか踏ん切りがついてない感じというか…。モヤモヤ。
「騎士」と「貴族」の関係についての以下の記述はおもしろかったです。
「騎士と貴族の区別しにくくなるということは、別の言い方をすれば、戦う集団としての荒々しく粗野なきしにとって、高貴さnoblessや高度な倫理観を備えることが必須になってきたということでもある。
そのことを促したのが後に騎士道と呼ばれるようになる「騎士の理想像」の出現であり、教会の影響力である。騎士の理想像は、武力の論理・慣習と教会の愛と反戦の原理という二つの一見相容れないようにみえる理念の妥協の産物であるということができる。」p147
「騎士道」は「妥協の産物」か~。
「教会の平和」(「キリストの平和」だっけ?)と支配者層の原理の葛藤、というのは、中世史研究ではほかで見たこともあるような気がするのですが、「騎士道」概念もやはり歴史の必要性に迫られて生まれたのだと再確認。正々堂々と戦うとか弱きを助けるとか、そういうことは自明のことではなくて、歴史的に作られたものなんだよな。
佐藤賢一が、どっかの著書で「中世人は人を殺すことをなんとも思っていなかった」みたいなことを言ってた気がするが、それも然り。
今日読んだ本のことを語る