【罪と罰】
まあ読んだきっかけは、元々のコロンボを作った方が「コロンボのモデルは『罪と罰』の予審判事ポルフィーリーです」と言ってるインタビューを見たからなんですが、それに関してはすごく納得した。彼の粘り、彼の優しさ、そこは確かにこコロンボであると思った。
もちろんこの主人公ラスコーリニコフがどういう意図で何を行うのか、それはすでに読む前から聞き及んでいる。わたしがつらかったのはマルメラードフの告白で、同居人はそこで読む気をとりあえず失った。わたしもうんざりした。でもそこから先はおもしろくてたまらんかった。
訳者は訳していて秋葉原の事件を思い出したと書いてていたが、わたしが先に頭に浮かべていたのは、一時ネットで話題になった、『丸山眞男を殴りたい』だった。後半入って平行せざるを得なくなった(次の予約待機者がいるので延長できない)コンビニバイトの顛末記にも、暗澹ともさせられた。そこに何かのつながりを見いださずにはいられなかった。結局この本は、まったく「今」についての物語でもあるのだ。
貧しさとそれに伴う無気力によって、家族とも一体感など見いだせず、友人・知人との関係どころか、自分自身とも乖離してしまった人間が、全くの偶然で知り合ったまったくの他人となんらかの関係を結ぶことによって、自分の罪と、自分に科せられた罰の意味を理解する、その可能性を見いだす話。
それでも生きられることを縊死できる、その可能性を示す物語。
エピローグで、はるか昔、自分が自分と一致できた、自分を受け入れることをしてもいいのだとわかった瞬間があったことを、ありありと思い出した。
ここが、最初である。最初の位置についた。これから始まる。
始めることができる。なんて幸福だろう。
自分(id:dadako)のことを語る
