『永遠の夫』ドストエフスキー(著) 千種堅(訳) 新潮文庫
ドストエフスキーにしては気楽に読めるものかも。なんとなく、舞台とか映像で見たい感じ。トルソーツキーは醜悪で哀れかもしれないけど、ほんとはヴェリチャーニノフのほうが身勝手なエゴイストにも見える。
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『グレアム・グリーン全集25 ヒューマン・ファクター』
第二次大戦時、諜報機関に勤めていたグリーンの直接の上司がキム・フィルビーだったそうで、彼をモデルにしているのでは、と言われているスパイ小説。
見事なタヌキとキツネのばかしあい、誰がプレイヤーで誰が駒なのか、情報戦と言う名の派手さのまったくない孤独なゲーム。
イデオロギーとは無関係の裏切り。個人にとっての故郷とは、土地か、繋がりか、それは選びとれるものであるはずなのに。
グリーンにはずれなし。
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『負けた者がみな貰う』グレアム・グリーン(著) 丸谷才一(訳) ハヤカワepi文庫
会社の大株主の気まぐれで、二度目の結婚式をカンヌであげなければならなくなった、バツイチ・40代・経理の平社員の「ぼく」。そして、カンヌといえば、カジノ。賭事など興味がなかったのに、自分の見出した必勝法「システム」にのめりこみ始め……
経理って、確かイギリスではまったく冒険心も遊び心もない人の代名詞だったはず。グリーンはそういう人がいきなり何かにかっさらわれちゃう話を描く人だなあと思う。これもそういうお話。2/3くらいまでは気分悪くなるんだけど、そっから先がすてきだった。
二回映画化されてるらしいのだけど、どちらも見たことない。なんか、「御老体」は今だったらモーガン・フリードマンとかがやりそう。
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『貧しき人々』ドストエフスキー(著) 木村浩(訳) 新潮文庫
ゴーゴリ『外套』のパロディともいわれる、ドストエフスキー処女作。カバー裏の解説文に「〜の不幸な恋の物語」とあるんで一瞬あれっと思ったが、考えてみると、ドストエフスキーは恋物語でないもののほうが少なかったりもするか?
『外套』を薦められての反応、すごいリアル。彼女が本当にそういうつもりでそうしたのかはわからないのに、そう考えて脊髄反射してしまうあたり。
お金がないと、見える範囲が狭くなるよね。空間的にも、時間的にも、思考的にも。
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『からくりがたり』 西澤保彦
半年一作くらいのわりで全8作の短編連作。
久しぶりに読んだ西澤保彦……はじけてるなあ(^^;) あまり気軽に誰にでも勧められるような小説家ではなくなってしまったかしら。基本は推理小説で、全体の構造でも仕掛けを作ってあるのですけど、それより各キャラクターの妄念とかエロ描写につい目を惹かれてしまう、どっかずれてるわたくしでした。
これも人物表作りながら読むほうがいいかも。
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The Sittaford Mystery by Agatha Christie
確かに映像化されてるのを見た覚えがある(設定と犯人とトリックを覚えてた)んだけど、ポワロもミス・マープルも出てこない話。物語からいくとやっぱり改変してマープル・シリーズのドラマに入ってるんかしら。
これは読んでて途中で混乱しそうになったんで、人物表作りながら読んだほうがよかったかもしんない。
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『本の森の狩人』筒井康隆(著)
積読消化、お風呂の友。
新聞連載の書評を一冊にまとめたもの。取り上げられてる本、見事に一冊も読んでなかった。わたしの読書量はそんなもんです。
なんか積んでない未来の積読本が増えた気はした。
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『内なる私 グレアム・グリーン選集1』 瀬尾裕(訳) 早川書房
主人公は、自分の言動のひとつひとつを批評する「内なる私」に悩まされる。「それ」は何を基準にわたしを批評するのか。いつ、何を基盤にして彼の中に築かれたのか。
彼は追われる。何が彼を追いかけるのか。
死人を活け戻すのは誰なのか。現実の死だけでは、死人は死なず、生き続ける。
グリーン本人が認めるように若書きのメロドラマだけれど、それでも読んでよかったと思う。
鮮やかなラストだった。あいかわらず。
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『叔母との旅 グレアム・グリーン全集22』 小倉多加志(訳) 早川書房
主人公は50過ぎの平凡で自己満足した引退生活に入った男、彼は母親の葬式で、50数年ぶりに叔母と再会する。彼女はエキセントリックかつチャーミングな女性で、次々に彼が知らなかった事実や人々の話をする。ちょっとした旅行に誘われた主人公は、二、三日の観光旅行と思い承諾する。彼はまったく知らなかったのだ、叔母が生粋の旅人であることを。
イギリスの小説で叔母と甥となるとだいたい一筋縄ではいかないものだろうとは予測していたけども、これは読んでてとっても楽しかったし、人間的だった…[全文を見る]
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『父 パードレ・パドローネ ある羊飼いの教育』 ガヴィーノ・レッダ(著) 竹山博英(訳) 朝日選書
以前ぱさんてさんに紹介いただいた、サルデーニャ島の生活について触れられてる本。著者の自伝・独立編、というところだろうか。
おもしろかった、と同時に、しんどくもあった。タイトルからもわかるとおり家夫長を自認する父親と、長男である著者との相克を書いたものなので。もしかしたらフラッシュバック起こす人もいるんじゃないかと思われるほどの「教育」が描かれている。
後に弟が起こした「反乱」とそれへの著者の反応を考えると、長男がいかにたわめられて育てあげられるものかがよくわかる。そしてその影響から抜け出ることは、本人が理解していてさえも、難しいことなのだろう。著者の後の生活を知り、なんだか哀しくなった。
そのうち、これを原作としたという映画のほうも見たい。
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『ジュニア・ブラウンの惑星』 V.ハミルトン(作) 掛川恭子(訳) 岩波書店
積ん読消化。昔赤木かん子のYA向け読書ガイドブックで感想を見てから気になって、買っておいたもの。
内容については、ストリート・チルドレンの話、くらいしか覚えてなくて、ただ、「バディーのように支えることを覚えそちらに回ってしまった子はもう助けられないのかも」云々というのが、印象に残ってる。なぜか『BANANA FISH』のアッシュを思い出したのだ。
でも、わたしは、このラストで、彼も救われたのだと信じられた。バディーはいうなれば美しくないアッシュで、それゆえの幸運もあったのだけど、彼がこういうふうに救われる話だってあるんだと思うとすごく嬉しかった。
かなりかなーりおすすめです。これは自分の本なので、読みたい人には貸せますよ。
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MURDE ON THE ORIENT EXPRESS by Agatha Christie
これはなんかすごく純粋推理もの的な。なんか、ポワロでなくてもよかったんでは、という気がするくらい。特に最後の方、ポワロを圧倒するような語りになるし。
ちなみに映画はかなり正確に作られてた、でもそれぞれのキャラクターのバランスは難しかったんだろうなあと思わされた。
こないだやったスーシェ版ドラマはもっとドラマティックで、こっちは確かにポワロでなければいかんかったろうと思わされる改変があった。嫌な人は嫌かもしれない。わたしは納得できたんだけど。
クリスティ本人に感想を聞いてみたいような気もする。
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もちろん、報道記者を自負し論説記者の座を拒否する主人公も、当事者として巻き込まれる。
祈りたい時、もういない人に謝りたい時、そういう時に、どうしても求めてしまう存在を、やはり彼も求めたくなる。じっと、竦んでいるようにも見える。
理屈ではないのだ。
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『おとなしいアメリカ人 グレアム・グリーン全集14』 田中西二郎(訳) 早川書房
以前、idページで勝手に引用した「無邪気な存在の危険性」、あれがこの小説の大きなテーマの一つだった。
それから、今目の前で起きている出来事(この小説ではインドシナ戦争)に対して、傍観者/観察者として存在することはけしてできない、すべての人間が当事者である、いずれ巻き込まれるということ。
わたしがインドシナ戦争について何も知らないので最初ちょっと混乱したが、時系列としては、この小説のできごとあと、アメリカはベトナム戦争の当事者になる。そしていまだに彼らは無邪気に見える。
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『老親介護とお金 ビジネスマンの介護心得』 太田差惠子(アスキー新書)
同居人が借りた本。読ませてもらった。
介護を漠然と恐ろしいものでなくするための本。
「介護にいくらかかるか」ではなく、「介護にいくらかけるか」、ビジネスと同じくプロジェクトとして捉え、メンバーを決めチームを作り、あくまで被介護者自身の資産をメインに介護にあたっていく、そのやり方をまとめた、たぶん初心者向けの本。
入門書としてよかった気がする。
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『冷蔵庫で食料を腐らせない日本人』魚柄仁之助
彼の本は一時けっこう詠んだんけど、リストラ術のシリーズは極端な方向に行ってしまい、なんか珍生活してる人の読み物になってしまって、実践にはなかなか移しにくかったと思う。これは実践本。乾物もっと食事に取り入れたい。かんばろ。
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『ぼくのともだち』エマニュエル・ボーヴ(著) 渋谷豊(訳) 白水社
タイトルと背表紙のイラストに惹かれて借りてみた。
みやぎくんが書いてた「ともだちを食わず嫌いする」って、こういう状態なんじゃないかと思った。「ともだち」がどういうものかわからないから、ちょっと顔見知りになった相手が自分の予測したあるいはこうあれかしと考えた「その人」とちょっとでも違うと、「この人とはともだちになれない」と決めてしまい、「ぼくがほしいのはそんなにたいしたものじゃないのに」と嘆く。
『地下生活者の手記』は、まだそこに決意があった。『葉蘭を窓辺に飾れ』は、恋人がいた。
この主人公には、他人が存在しない。軍ではどうやってたんだろう、とも思う。
最後、まったく共通点はないのに、『サイコ』のラストの、硬直状態を思い出したよ。
ユーモア小説なはずなのに、わたしにはちょっとリアルなホラーでした。
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『完全無欠の名探偵』西澤保彦
ずいぶんひっさしぶりに西澤保彦。積読消化。
人に言われて気づいたけど、なるほどこの人のは、けっこうバカミス多いんかも、というかこういうのがバカミスなのかと思い当たるのがいくつか頭に浮かんだり。
でも心理描写はけっこうひんやりさせるところが多くて、とても好き。
ちょっと『腕貫探偵』と感じにてるかな。
土佐弁がお好きな方におすすめ。
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『周防正行のバレエ入門』周防正行
山岸凉子が「今まで見たバレエ映画で一番おもしろかった」と書いてた『ダンシング・チャップリン』、これ読んでたら、すごく見たくなった。
前半の、まったくバレエと関係ない人がプリマと結婚してバレエというもの自体に目が鱗になる部分もおもしろいのだけど、後半の『ダンシング・チャップリン』という舞台作品を映像作品としてどうおきかえ成り立たせるか、その試行錯誤の思考過程がかなりおもしろかった。
周防さんの書くこの手の本、けっこう好き。
……しっかし、ローラン・プティって予想どおりの人だったんだなあ(^^;)
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『私家版』ジャン=ジャック・フィシュテル(著) 榊原晃三(訳) 創元社推理文庫
昔、テレンス・スタンプ主演映画の予告編を見てずっと気になってたもの。ちなみに映画も結局見てない。あらすじは、その予告映像からおよそ想像がついたものだったのだけれど、それでもよかった。映像向きとも思う。
青春の光の象徴と影の象徴の愛憎劇ともいうべきだろうか。二人の関係のやらしさというのか、なんかある意味スケベイな小説だったようにも思う。
テレンス・スタンプ似合ったろうなあ。
/本