/俳句

ヤマバトが鳴く朝もやにつつじ燃ゆ

胸騒ぐ遅咲きの花揺らす雨

桜もち春が来たかと舌で知る

憂鬱を散らすあてなし花粉症

はばからぬ姿妬まし猫の恋

空つ風足踏みの影踊る朝

空腹の我が身惑わす味噌おでん

あなうれし鼻腔に満ちる関東炊き

聖堂の鐘凍る朝霜を踏む

早生蜜柑名を見て舌が思い出す

ささくれに染みてもだえるこたつみかん

始発前クシャミが響く渋谷駅

ほうき手にでるのはため息ばかりなり

紅玉の酸味こいしや霜見月

初霜を踏んで戻りしちびの頃

鍋恋いしタラを求めて家路つく

駅降りて思わずマフラー巻きなおし

ぎんなんの爆ぜる音で知る夜のしじま

ススキ揺れ色なき風のたよりかな

何処へと船を漕ぎだす日比谷線