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仮に無効として選挙が取り消されたとすると国会が議決した法律や予算執行等への影響を考えると違憲と考えても裁判所としてはどうしても無効にはしにくいところがあります。
で、理屈としてはいくらか無理筋なんすがずっとつかわれてたのが「事情判決の法理」という概念です。
違法性のある行政処分を取り消してもらうために行政事件訴訟法というのがあってそこの31条に「取消訴訟については、処分又は裁決が違法ではあるが、これを取り消すことにより公の利益に著しい障害を生ずる場合において、原告の受ける損害の程度、そ の損害の賠償又は防止の程度及び方法その他一切の事情を考慮したうえ、処分又は裁決を取り消すことが公共の福祉に適合しないと認めるときは、裁判所は、請求を棄却することができる。この場合には、当該判決の主文において、処分又は裁決が違法であることを宣言しなければならない」というのがあり、つまるところ【違法と判決文に書くけど取消しをすると影響が大きくて公共の福祉の観点から好ましくないから原告には泣いてもらう】という通称「事情判決」という判断を裁判所は示すことができる、条文があります。
で、ほんとは行政事件訴訟法は公職選挙法には使えないので、この事情判決の概念・枠組みだけを流用して「事情判決の法理」というのを最高裁判所は昭和51年にひねり出し、違憲もしくは違憲状態だけど、無効としたときの影響を考えて選挙は無効にしないということの理屈付けをずっとしています。

蛇足なのですが、09年夏の衆院選で最少の高知3区(土佐清水市ほか)と千葉4区(船橋市)との間で約2.3倍の格差があったのですが、この選挙についての無効を求める訴訟があって、2011年3月23日に最高裁大法廷で、約2.3倍の格差について「憲法の要求に反する状態に至っていた」 という判断をが下しています。このときの訴訟ででかいのは「1人別枠方式」の否定です。衆院小選挙区は09年だと総定数300のうち各都道府県にまず一議席ずつ配分し、残り253を人口比例で都道府県に振り分けて区割りを決めていて、たとえば高知は77万で+2で計3議席、千葉は602万で+12で計13議席くらいのはずです。で、この制度について一票の格差の主要因としてて「1人別枠方式と、これに基づく区割りは投票価値の平等に反する状態」としてます。最高裁の判断を知ってて去年は馬耳東風で1人別枠方式を温存したまま定数を0増5減として衆院選に突っ込んだので、いま係属してる裁判の高裁の次の最高裁では、無効までいうかどうかはわかりませんが、かなりきつい表現になるのではないか、と予測してます。