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読了のことを語る

エドゥアール・ルイ著『エディに別れを告げて』(高橋啓訳)

高橋啓氏が世界で一番訳したフランスの作家、「最後の文人」と呼ぶのが相応しいキニャールについては読んでよんでと叫ぶけど、そのいっぽうで誰も彼もがあの一連のテクストを読むことを愛するわけではない、ていう諦念がある。ときにラテン語が、そしてまたその背景にある浩瀚な書物の「重さ」によってぺしゃんこになりそうになる体験を誰もが好むとは思わない。
けど、この小説に関しては、そういうものじゃないので読んで、て叫びたい。
これは自伝、だからだ。
極貧の村で生まれた同性愛者の少年が差別といじめと両親や親族たちの無理解と、近親者であるがゆえに愛したいと願いながらもたらされる僅かな「好意(それを愛情とわたしは呼ばない、わたしには愛情がよくわからない)」を分け与えられ、ときにそれを受け取り損ねながら育ち、ついには土地を家族を名前を捨てた青年の物語なので。