コバルト文庫で一番思い出に残ってるのは、と聞くと、それこそ人それぞれなのだろうけど、わたしは、小説じゃなくて留学記になる。カリフォルニアへの、女子高生の。
おもしろくて新鮮で、知らないことばかりで、まだアメリカに憧れもあったから、一年間の親への手紙をまとめたそれを、わくわくしながら読んだ。あんまりおもしろかったから、同趣向のオーストラリアだかニュージーランドだかの留学記も手にとってみたぐらいだ(なぜそっちは最後まで読まなかったかというと、冒頭、最初のホストファミリーにメイド扱いされた話が出てきてめげたから)。
自分で買った本だったけどもう手元にはなくて、著者名もタイトルも覚えてないし、留学記なんておそらくコバルトでもマイナーのマイナーだろうから、ググったりも話題にしたりもしたことなかった。
先週、一年前くらいのクロワッサンの、本の特集が組まれてる号を借りてきたら、コバルト文庫についても見開き2ページで扱われていた。で、『コバルト文庫40年カタログ』の紹介のところで、集英社学芸編集部編集長へのインタビューが……、あれ、この名前!
宇田川晶子さん。見た瞬間に思い出した。あなたですよね、あの本の作者!
コバルト文庫で本を出した高校生がコバルト文庫の編集者になったなんてことがあるかしらと思ったけど、年齢も顔写真も、合っている気がする。あの頃もおかっぱでしたよね。
宇田川さんの名前でググったら、記憶の中の本の表紙がちゃんと見つかった。
何十年かぶりに見たよ、この表紙。
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