「夜と霧 新版」
(ヴィクトール・E・フランクル著、池田香代子訳)
ウィーンに生まれ、フロイトやアドラーの教えを受けて精神科医になったものの、ユダヤ人であったが為に強制収容所に送られた著者の、収容から解放、そしてその後までの体験を綴った大ロングセラー本。
もうずーーーっと気になっていつつも手に取ってなかったんですが、近所のブックオフで、かなりきれいなハードカバーが300円とかだったんで読んでみた。
一読してまず感じたのは、書かれていることの重さに反する(?)読みやすさ。そんなに長い本ではないのもあって、半日かからずに読み終わってしまった。
一つには、語り口があくまで平静で、過度に感情的でないところにあるのかなあと思う。作者が精神科医であったことが大きいのかと。
で、もう一つには、ドイツ語の副題「trotzdem Ja zum Leben」=それでも人生にイエスと言う、に現れているような、なんていうんだろう、ヒューマニズム?みたいなものが全体を貫いているところ、があるからのように思う。
(皆様(多分)ある程度はご存知の通り、)悲惨の一語で片付けるには生温いくらいの収容所生活の中で、作者は、そんな中でも人間が人間であり、必ずしも尊厳を奪われているばかりではないこと、を見てるんですよ。
書かれてる事実があまりにも……で、読んでる途中に本を閉じて目をしばらく虚空に反らしたり、手を額に当てたり、そんな風にせざるを得なくなってしまうところはいくつもあったんですが、なんつーか、作者が生還してるからってだけじゃなくて、辛いばかりで終わらない読後感があります。
あと、特に後半の方、「人間とはどういうものなのか」ということについての名言……というか、思わず膝を打つような考察がいくつもいくつも出てきます。今後も手元に置いて、読み返そうと思う。
総じて長い間読みつがれてきた本ってやっぱりそれなりの内容があるんだなー、と思える内容でした。今更ながらおすすめです。