「そして大佐は?」「ミス・ブラックロックが読みたいと言っていたインドについての本を持って、一度、訪ねたとか」「読みたがっていたんですか?」「読まずにすませたかったが、断れなかったとミス・ブラックロックは言っている」「そうでしょうね」クラドックはため息をついた。「誰かが本気で本を貸したがっていたら、断ることはできませんよ!」 アガサ・クリスティー『予告殺人』羽田詩津子訳
気をつけなくっちゃいけませんね。
新訳で出たので、久しぶりにマープルものを読んでいます。どんどん変わっていく社会を、老人があちこち顔を出さないのはおかしいわ、といってすいすい歩き回るマープルが好きです。「ぼくは親のすねをかじっていて、くだらない本を書き、ものすごい近視で、おしゃべりだ。最悪だな。どう、結婚してみない?」といった思わず声に出して読みたくなる口説き文句なども読めます。