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日常のことを語る

放心状態で、車を走らせていると、知らない街の、知らない海へ辿りついた。気がつくと4時間くらい経っていた。雨も止んでいた。外に出ると、潮風の匂いがした。松や雨降りの土の匂いもした。それはぼくが高原での生活の中で、人生から永遠に奪われたと思っていたものだった。高原には、海だけでなく、自然の放つあらゆる匂いがないのだ。清浄といえば、清浄だけれども、匂いがないと季節が分からないのだ。海には「雨晴海岸」という名前がついていた。そのおかげかどうか分からないけれども、ぼくは雨に濡れることもなく、潮風に吹かれて、潮騒の音に身を任せることができた。海を見るのは1年半ぶりだった。ぼくは水平線を見るのが好きなのだ。行き帰りで、タバコを2箱吸って帰ってきた。