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生活のことを語る

5歳の甥っ子が金曜ロードショーの『となりのトトロ』の録画を見ていたので、本当の森を見せてあげたいと思って、かつて自分が遊んでいた森へ連れて行った。ぼくが子どもの頃は、まだ「里山」という概念があって、人と自然が共生している気配が残っていた。「入会地」と呼ばれる場所は、たいてい人の手が入っていて清潔だった。ただ、あまりにも人が減り、放置されてしまった森は『もののけ姫』のように荒々しい生命の崩壊と再生の場所になっていた。樹齢100年の大木がバタバタと倒壊していて、朽ちた木から新たな木の芽が出ていた。藪を漕いで、かつて存在した道を一周したら、甥たちは全身トゲのついた種まるけになっていた。ぼくが知っていた森とは、人の手で手なずけられたものだった。こんな風景は、たぶん全国的に広がっているんだろうなと苦々しく思った。森と人の住処の間の緩衝地帯がなくなっているのだ。