@kodakana_ship10
ラジオ/ホームラジオのことを語る

パナソニック FM/MW/SW ラジオ RF-562DD2 評価編

それは、松下アナログ受信機最後の逸品‥‥じゃ、なかった?

パナソニック RF-562DD2

(承前)現地時間6月24日に米アマゾンのメリーランド倉庫を出発した荷物は、同日中にカリフォルニアまで運送され、27日に国際輸送路に乗って、日本時間の7月4日に到着した。

荷物は Amazon.com のロゴが入った段ボール箱に入ってい‥‥なかった。

到着した商品

驚いたことに、商品の箱そのものに荷札が貼られた状態なのであった。素材は段ボールなどではなく、割と薄めのへなへなの厚紙である。少しひしゃげていた。噂では、中国から何か買うと酷い状態のことがあるとかいったけど、やはりそこは同じ東アジア文化圏。東アジア人は包むのが好きなのだ(たぶん)。AliExpress のラジオ屋さんで買った物もきちんと梱包されていた。これは異文化からの宅急便だ。日本企業の製品なのだが。

さて、注文したものは「RF-562D」。或いは「RF-562DD」が来る可能性もあった。さて、この現物は‥‥

外箱の表記は"DD2"

「RF-562DD2」と書いてある。これは何だ?!

RF-562DD2 というラジオ

実は注文する少し前に、562D/DD の他に、562DD2 というものがあり、これは内部がデジタル(DSP)化されている、という情報を仄聞していた。DSP も悪くはないけど、今回の目的からは外れるので、DD2 が来ると知っていれば買わなかった。しかし、パナソニックの海外向けウェブサイトで探してもそんな機種の情報は見付からないし、本当に存在しているのか半信半疑だった。

製品を見ていこう。

本体外観

トランジスター時代の雰囲気を再現しようとしているものの、造りは全体的に安っぽく、プラスチックの黒い成型色が露出した部分も、感触を良くするような処理は行われていない。これは、元の 562D と同じで、ほとんど見分けが付かないようだ。

ダイヤル部分

ただ同調と電源県音量のダイヤルの辺りだけ、やけに質感が良い。回す感覚もなかなか。よく触る所だけに力を入れるスタイルなのか。

チューニング・ゲージは横型。個人的感覚、縦長より横長の方が好きである。FM は日本向けではないので 87〜108MHz に対応。中波は 520〜1730kHz に対応し、日本で有効な 522〜1620kHz までの実質的な長さは 6cm くらいある。短波は 5.9〜18MHz に対応。

周波数表示

あら、100 の上にアキュートみたいなゴミが入ってるよ。なお RF-562D/DD とは中波と短波の対応周波数範囲が変わっているので、確実に商品そのものの写真を見ることが出来る場合は、ここで DD2 との見分けが付けられる。

RF-562DD2 背面

背面には、バンドの切り替えと電池室がある。電池は単一型が二本で、今回は大作商事の「単1のつもり」を使い、単3形の充電池を四本装填した。ロッドアンテナは約80cmで、94MHz の 1/4 波長にほぼ相当するから、90〜95MHz のFM補完放送帯の受信に適している。

向かって右の側面にはイヤホン端子と外部電源端子がある。イヤホン端子は、ステレオのイヤホンを挿すと、片側からだけ音が出る、真正のモノラル仕様。AC アダプタは付属せず、外経 4.0mm、内径 1.7mm で、定格 3.6V となっているが、乾電池は二本なので、おそらく 3.0V でも動作可能。これなら汎用品が市販されているので、後で試してみたい。

筐体の安っぽさは、付属する合成皮革のカバーを付けてしまえば目立たない。ここまでトランジスター時代を再現した製品も珍しい。

合皮製のカバーを装着した所
合皮製カバーの背面

これまた昔風に、肩から提げられるくらいのストラップも付属する。これもへなへなの軟質プラスチックで安っぽい。

ストラップ

感度と挙動

電池を入れて、中波帯でダイヤルを回してみると、挙動と音質で、すぐにこれは DSP 機だと判った。自動周波数制御の動き方と、強力で狭い帯域フィルタを掛けた音は、オーム電機の RAD-H310N と傾向がよく似ている。

H310N と比べると、チューニング操作は、本機の方が大きさがあるだけ分解能が高い感じで、隣接波の選り分けがしやすい。音はどちらもおそらく 2kHz 程度の帯域フィルタを通していて、高音域が出ていないのは同じ。本機の方がやはり大きさがあるだけ、音の力には余裕があるが、独特の濁りと掠れが少しある。決して良い音ではないのに、変に気を惹かれるような高音や低音が出ず、ながら聞きをしていると不思議と心地よく感じることがある。

ジェイ・アレン氏の 562D に対する評価を参考にすると、中波の感度は変わっていないようだ。北海道胆振地方の自宅で、日中に青森放送の野辺地中継局(1062kHz/100W)が、十分に連続して聞いていられる程度の品質で入感したのは驚いた。加えて背景に微弱ながら混信を感じ、これはどうやら岩手放送の田野畑中継局(同一周波数/300W)らしい。それだけ遠くからの電波を受けることが出来ているのだ。

FM は DSP の効能で感度が良く、短波も十分実用になる性能だけど、ここでの主題は中波なので詳しくは述べない。

内部を拝見

ここまで来たら興味本位で、内部も見てみよう。見るからに分解しやすそうな造りで、実際に背面のネジを四本抜く(一本は電池室の中)だけで、簡単に背面が外れる。今日だけは初代タイガーマスクについては無視して欲しい。

機体内部

まず目を引くのは、約 14cm の長さを持つフェライト・バーアンテナ。これは中波の高感度を保証している。心臓部であるデジタルICは、反対側にあるらしくここからは視認できない。純アナログ機なら同調用にあるはずの可変蓄電器は見当たらない。平円形の可変抵抗器は二つあり、一つは音量調節用のはずだから、もう一つは同調用だ。ダイヤルを回すと抵抗の値が変わり、デジタルICがそれを読み取って、同調する周波数を決めるという仕組みだと思われる。

結び

このように純アナログ機が欲しいという本来の動機から言うと、ちょっとアテが外れてしまう結果になった。DSP 機で良いならソニーの ICF-506 でも済んだわけで、わざわざ海外から輸入する必要は無かったとも言える。しかし本機には本機にしかない特徴と、欠点があっても良いと思わせてくれる魅力がある。そして、やはりアナログ的チューニングは趣味性があって楽しい。