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読了のことを語る

渡辺淳一「無影燈」

※初版は1972年発行、ドラマ「白い影」は2001年放送。なので小説とドラマの展開はやや異なります。
※ドラマを見て原作を読みました。
※ネタバレありきでお願いします。

・おおかたの渡辺作品にありがちな男の身勝手さ全開でこの作品もできています。
・死に面した人間が恐れることは、死ぬことそのものではなく自分の死後も生きていく人間に忘れられること。
・直江もそう考えていたことが患者に対する治療のあり方からうかがえる。かなり切ない。やりきれない。
・北海道旅行への誘いや最後の夜の「忘れないか」の会話は直江が倫子をちょっとでも愛していたからだと思いたい。
・そうでないと読者が救われない。
・やりたいだけの女と一緒にいたい女は別物だと思わせてくれって感じ。
・好きな人と行くところならどこだって楽しい。そして愛した人が眠る場所ならどこだって行きたい。
・無影燈の下で終わるっていうのがいいですね。影がない、でも影のもとがいるかいないかもわからない。
・だからラストシーンはなんとも言い難いな…いつもいた場所、どこにもいないならそこにいるという思い。

・これが20年後の「失楽園」ひいては「愛の流刑地」につながっていくんだろうなあと思いました。
・どんどん男の身勝手さがアップしていきます。

・ドラマで使われた曲は、主題歌が竹内まりや「真夜中のナイチンゲール」、挿入曲がマーラー 交響曲第5番 嬰ハ短調より 第4楽章(アダージェット)とマスカーニ オペラ「カヴァレリア・ルスティカーナ」より間奏曲(アヴェ・マリア)ですが、これを聴いてみると泣けるよ。