- ---『夢のように、おりてくるもの』 第三部 「夢も見ない」4------
電話の着信音で、おれより長風呂の彼があわてて浴室から出てきた。こういうとき素裸を期待しても無駄だ。床を濡らさないようタオルで濡れ髪をくるみながらも下だけはきちんとパジャマを穿いている。夏の盛りだ。風邪をひく心配はないのだからこんなときくらい隙をみせてくれてもいいのにと思わなくもない。一緒に暮らしはじめてもう数か月たつというのにあまりにガードが固すぎる。おれだって、なにもこのひとにパンツ一枚で家のなかを歩いてほしいとは願わないが同居人の役得くらいあっていい…[全文を見る]